SSブログ

日本人には想像しがたい技能実習生の母国での現実 [技能実習生自身の問題]

境遇が違うということは、外国人には日本人の風習や生活様式、
価値観などわからないのと同様に、日本人にも彼ら彼女らの
生まれ育った町や環境はなかなか想像に難しいところです。

こんなストーリー(記事)をその理解の足しになればと
昨日に引き続きご紹介します。



社会の中で生きていくにあたり、普通に暮らしているだけでも
様々問題が起きます。

その中でも、自分が悪いわけでもない、かといって人のせいでもない
そんなこともあるのが現実です。

今回のケースは正にそんな事件であったのではないかと思います。


「お父さん起きて」墓前で呼ぶ娘 実習生ジョーイの死
朝日新聞デジタル 2015年7月20日01時30分
http://digital.asahi.com/articles/ASH74570YH74OHGB00R.html


AS20150719001211_comm.jpg


以下、記事一部抜粋

先月、遺族を訪ねた。マニラから車で約10時間、
ルソン島北部の標高2千メートル前後の山岳地帯に、
段々畑とコンクリートの家々が点在する。
先住民族、カンカナイの集落だ。

ジョーイは8人兄弟の上から6番目だった。
母のテレサ(65)は
「ほかの子は反抗したり文句を言ったりするけど、あの子は従順だった」
と涙ぐむ。


苦労して大学に進み会計学を学んだが、それを生かす就職先はなかった。
溶接工としてルソン島中西部の町へ出稼ぎに行き、
食料品店で働くレミー(27)と出会う。
給料日前でお金のないジョーイの付け払いをレミーはこっそり許した。

当時のジョーイの給料では妻となるレミーと家族を養うのは難しかった。
「楽をさせたい」と実習生になることを決め、4年前に日本へ。
まもなく娘のグワイネット(3)が生まれた。


それまで、家族が畑の野菜を売って手元に残る現金は年6万5千円ほどで、
肉や魚を食べるのは来客時だけだった。
ジョーイから月13万円の仕送りが入るようになり、
暮らしは一気に楽になった。
その後に父が前立腺がんになって治療費も必要になり、
ジョーイは日本滞在を実習生として最長の3年に延ばした。

無料通話アプリのテレビ電話で娘を見たい。
そんなジョーイの願いに応え、レミーは娘を連れ、
車で約4時間かかる大きな街のネットカフェに何度か出かけた。
ジョーイは各務原市の寮のパソコンで成長を見て喜んだ。

「どうだ。元気か」。
昨年4月半ば、ジョーイはレミーに携帯電話で尋ねた。
「元気にしてる」。
いつも通りのやりとりが、最後になった。
1週間後、ジョーイ急逝の知らせにレミーは泣き崩れた。
あと3カ月で帰国するはずだった。

幸い日本の実習生受け入れ団体が保険に入っていた。
遺体の防腐処理や搬送などの費用140万円と、
遺族への死亡保険金700万円が出た。
今年4月には岐阜労働基準監督署から書類が届き、
タガログ語でこんな説明があった。
過労死と申請して認定されれば、
一時金300万円と、毎年約120万円が家族に支払われる――。

「日本はいろいろ世話をしてくれたし、ちゃんと遺体を帰してくれた」
とレミーは感謝する。
それでも、優しかったジョーイを思い出さない日はない。
「お父さんはどうして帰ってこないの」とグワイネットがぐずるたび、
「どうして死んでしまったの」と思う。

グワイネットは、1年前の葬儀で父の姿を初めて目にした。
裏山の墓をレミーと訪れると、「お父さん早く起きて。出てきて」と呼ぶ。
今も心が乱れるというテレサは、息子に願う。
「天国から家族を見守っていて」


以上、引用終わり。


とても悲しい事件です。

一つ一つの背景には様々な原因が混在しています。

大学まで愛息子を行かせても、そのキャリアを生かした職場がない。
働き口がないため、畑で作った野菜を売る生活。

→フィリピンではほとんどの職業が、雇用されてから5カ月でクビになります。
 なぜならば、6カ月以上継続勤務となると、日本でいう社会保険、雇用保険を
 かけなくてはならなくなるからです。会社側が。
 人工仕事で雇用される場合、人手は日本と違いワラワラといますので、
 けっきょく5カ月ごとに入れ替え入れ替えすることで、人件費を圧縮して
 操業していることが現実です。
 これは国の法律なので、ココを変えなくては改善は見込めないと思います。


8人兄弟の6番目。

→日本人は将来の自分と子供の生活を考えて、
 子供を計画的に産む家庭がほとんどです。
 フィリピンでは豊かな家庭が少なく娯楽がないからなのか、子作りは盛んです。
 あげく、避妊用具などはお金に日々困っているだけにわざわざしません。
 加えて、クリスチャンでもあるため、中絶には強い抵抗感があります。
 結果、子供が多い国となっています。

 ちなみに他国も同様かと思いますが、日本と比べて平均年齢は明らかに若いです。
 日本は世界最長の45歳、かたやフィリピンではなんと23歳と
 22年も違います。


父が前立腺がんになって治療費も必要になり・・・

→経済的に節制せざるを得ないなどある意味健康的かと思いきや、
 実は甘いものなど大好きで、食に関しては安全かどうか、
 栄養があるかどうかなど気にして食べていないからか、
 年を経るにつれ、病気になる人は少なくないようです。
 日本と違い、貧困さからか十分な治療も受けず悪化させての
 死亡なども多いのかもしれません。

 今回のジョーイは実習生に受かって出稼ぎに行けたからお父さんも
 治療できたのかもしれませんが、誰もが出稼ぎに行けるわけではありません。

 ジョーイが出稼ぎに行けなかったら、亡くなることはなかったのかもしれませんが、
 お父さんは亡くなっていたのかもしれません。



車で約4時間かかる大きな街のネットカフェに何度か出かけた。

→クリスチャンが多いフィリピンでは、家族の結びつきが日本人の想像以上に強い。
 特にクリスマスなどは一年で最大のイベントであって、実習生の中でも
 フィリピン人はまれにこの時期だけ帰国させてもらえる企業もあります。
 ただ、現在ではIT技術が進歩してくれたおかげで、昔は電話だけだったのが、
 顔が見える無料通話はありがたい限りです。


幸い日本の実習生受け入れ団体が保険に入っていた。

→基本的に技能実習生総合保険には全員が加入します。
 加入させていない組合と受入企業は紳士的ではないでしょう。


「日本はいろいろ世話をしてくれたし、ちゃんと遺体を帰してくれた」

→手続きを進めきちんと対応するのは日本の常識です。
 ジョーイもまじめに働き、会社の仲間として社長もきちんと対応したのでしょう、
 もちろん、会社を、自分を、従業員を守るために、労災申請することには
 躊躇はしたのかもしれませんが。


ジョーイのご家族には同情の余地は十二分にありますが、
社会の厳しさを言うならば、最終的には自己責任となります。


これは受入企業の社長はもちろん、実習生のみならず、我々日本人一人一人、
まったくもって公平に平等に降りかかってくることです。


日々の健康管理含め、個々で気をつけなくてはならないことだと思います。


記事にあるように、いくらお金が多少なりともらえても、
ジョーイは永遠に生き返ることはなく、
グワイネットちゃんはお父さんを亡くしたまま生きていかねばならないのですから。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。